【提言ver.2】日本野球機構・日本プロサッカーリーグにおける新型コロナウイルス感染症対策

【提言ver.2】日本野球機構・日本プロサッカーリーグにおける新型コロナウイルス感染症対策

【提言ver.2】日本野球機構・日本プロサッカーリーグにおける新型コロナウイルス感染症対策

以下、5月22日、一般社団法人日本野球機構(NPB)と公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が設立した「新型コロナウイルス対策連絡会議」で専門家から受けた提言を全文まとめております。提言日本野球機構・日本プロサッカーリーグにおける新型コロナウイルス感染症対策Ⅰ.基本方針内閣官房に設置された新型コロナウイルス感染症対策本部では、令和2年4月7日に緊急事態宣言を行い、さらに令和2年5月6日まで全都道府県を緊急事態措置の対象としました。その後、令和2年5月31日まで緊急事態措置の延長を行いましたが、国民一丸となった取り組みにより、感染対策に一定の成果が得られています。感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立に向けて、今後緊急事態の解除が期待される中で、日本野球機構および日本プロサッカーリーグにおける試合開催は、国民にとって注目度の高い大きな前進になります。一部都道府県では引き続き日常生活の自制を求められることになるとみられることから、試合の運営や移動方法を工夫し、なおかつ万全な感染対策を講じることで、多くの国民の模範となる必要もあります。従って、試合開催によって選手・コーチ・監督・スタッフ、観客が感染クラスターになることを防ぎ、安全第一に日本のスポーツ文化を守ることが、最も重要な目標と考えます。特に、トップアスリートであっても競技後には体力が低下することなどの特性も踏まえ、何より選手の負担の軽減を念頭に、以下に示す感染対策に従って、それぞれの競技団体におけるガイダンスを作成していただきたいと思います。なお、ここに述べる感染対策は、現段階で得られている知見や新型コロナウイルス感染症対策本部の方針に沿っています。今後のエビデンスの蓄積や、流行状況の変化に応じて随時変更していく予定です。また地域によって流行状況が異なることから、都道府県単位で方針が異なります。開催地の自治体との連携を緊密に図って、試合を開催することが前提であることを強調しておきます。Ⅱ.対策を考える上での基本事項1.新型コロナウイルス感染症の感染経路について新型コロナウイルスの感染は以下の2つの経路で生じることが知られています。(1)飛沫感染(咳・くしゃみ,おしゃべりによる感染)ウイルスが含まれる「飛沫」は、咳やくしゃみのみならず、おしゃべりによっても排出されます。①多数の人が多く集まる環境、②近距離での会話、③換気の悪い密閉空間、といった3条件が重なる状況では、特に感染するリスクが高くなります。(2)接触感染(手で触れることによる感染)咳やくしゃみ、おしゃべりで環境に排出されたウイルスは、テーブルなど環境表面に付着し、一定期間生存しています。汚染した環境に触れた手指などを介して、ウイルスが粘膜(口、鼻、眼など)から侵入することにより感染が成立します。2.新型コロナウイルスの感染時期新型コロナウイルス感染症は、発症の2日程度前、すなわち症状のない時期から感染性があることが明らかになっています。従って、前述した感染リスクの高い3条件が揃った状況では、症状がない場合でもマスク着用や手指衛生による感染防止策が大切です。また症状が軽快した後も長期間PCR検査で陽性が持続する場合や、一旦陰性化した後に再度症状とともに陽性化することも報告されています。一度感染した場合の復帰については、慎重な判断が求められます。Ⅲ.開催に当たっての考え方1.都道府県の方針に沿った開催の判断特定警戒都道府県においては、「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減」を目指して、クラスター発生の恐れがあるスポーツイベントの自粛要請があります。また外出の自粛や都道府県をまたいでの人の移動自粛について協力を要請されます。このため感染リスクへの対応が整わない、全国的かつ大規模なスポーツイベントでは、中止または延期するよう、主催者に慎重な対応が求められます。特定警戒都道府県以外の特定都道府県においても、感染リスクへの対応が整わない、全国的かつ大規模なスポーツイベントの中止または延期を検討する必要があります。上記のいずれにも該当しない都道府県においては、各都道府県知事のイベント開催制限の方針に反しない形であれば、以下に述べる適切な感染防止対策を講じた上で、開催を検討することが出来ます。2.選手および組織に求められる感染予防対策スポーツ選手は強度の高い運動とストレスにより、一時的に体力や免疫機能が低下することも報告されていることから、選手の心身の負担軽減も考慮した特別ルールの適用なども感染防止策として必要になります。また、選手本人だけでなく、選手と頻繁に接する方々も同様の対応が必要です。特に、関係者や家族を含めた対策の徹底が重要となります。(1)毎日の健康チェックと行動記録・体温測定:起床直後・就寝前など決まった時間での体温記録・問診表チェック:倦怠感、咳、咽頭痛、食欲低下の有無、睡眠時間など・行動記録:食事や出向いた場所・同行者などの記録(2)手指衛生の励行・消毒用アルコール剤による手指衛生の励行が原則です。ただし、野球の投手などでは、アルコールによりマメなど指先の状態に影響が大きいと判断される場合には、流水と石鹸による手洗いでも十分な予防効果が期待できます(手指消毒、手洗いのやり方は所属球団、所属クラブが指導)(3)出来るだけ人ごみを避ける・人ごみに入る場合にはマスク着用(4)施設の空調・換気状態の把握と可能な対策・スタジアムごとの空調・換気の状況の把握と給気能力の増強や加湿・空気のよどみを最小限とするよう換気・空調システムの見直し・ミーティング、打ち合わせなどはなるべく屋外で行う(5)ロッカー室・シャワー室、ベンチなどでの濃厚接触の回避・ロッカー室・シャワー室等の時間差利用、可能な限り1.5〜2m以上のヒト-ヒト間隔がとれるよう配慮するなどの空間遮断など・感染リスクを下げるため、チームを守るために、ポジションが同じ選手が可能な限り行動を共にしないなどの工夫は有効となる可能性がある(6)ロッカー室・シャワー室、ベンチ、トイレなどにおける環境消毒とタオルなどのリネン管理の徹底・高頻度接触面に対して次亜塩素酸ナトリウム等を用いて環境消毒を行う・タオルなどのリネンの共用は避ける。トイレなどの手ふきはペーパータオルを使用する・チーム専用トイレ個室に便座クリーナーまたはアルコール消毒スプレーを配備。利用者には毎回の使用を呼びかけ(7)選手、チーム関係者、家族に対する教育・啓発と意識改革・マスクを使用する際の付け方、外し方、交換のタイミング、手指衛生を学ぶ(指導する)・チーム関係者以外の方への協力の要請(運転手、報道陣など)・人ごみに入るなど濃厚接触が生じた場合の記録(主なものを報告、あるいは日記)・選手を含めたスタッフの行動記録の記載(8)リーグ全体での情報共有体制 ・体調不良者に関する情報共有による危機察知体制の構築(9)チームドクターおよびチーム連携医療機関の選定と連携体制の確認・疑い症例が出た場合の対応マニュアルの準備(各球団・各クラブが策定した対応マニュアルは、地域ごとに専門家チーム・アドバイザーがチェック)・指定医療機関との連携体制の確認・PCR検査などの迅速な対応の準備(10)安全な移動・チームとして以外の不要不急の移動は避ける・遠征先での外出・外食など不特定多数との接触の機会は避ける・バスなどでの移動時の換気、空間遮断による濃厚接触の回避・移動中もマスクを常時着用し、出発ならびに到着時に手指衛生を行う・公共交通機関を使用する際には混みあう時間帯を避ける(11)選手の負担軽減を考慮したゲーム運営・選手には発熱などの症状がなくても、必要な休養をとらせる・選手の家族らへのケアができるよう、選手には必要な時間を適宜与える。3.選手およびチーム関係者の事前検査開催にあたっての選手およびチーム関係者の各種検査(抗原・PCR・抗体等)については、最新の科学的知見、医療の現状、検査体制の充実、結果の解釈や対応を含め、検討されることとする。4.選手および家族も含めたチーム関係者に疑い例が出た場合の対応*検温で37.5℃以上の場合は必ず報告することとする*発熱:37.5℃以上が2日間以上持続した場合は、チームから離れ、チームドクターと相談の上、下記のような対応を行う。(1)チームドクターに報告・チームドクターから各地域の専門家チーム・アドバイザー、連携医療機関への連絡(2)各地域の専門家チーム・アドバイザーのアドバイスにもとづく濃厚接触者の洗い出し・濃厚接触者の抽出および集団発生に対するリスク管理(3)PCR検査および医療機関受診対象者の確認・健康チェック表、自覚症状を確認の上、PCR検査検体の採取(チームドクター、専門家チーム・アドバイザーなど)(4)マスコミ対応・各球団・各クラブの関係者およびチームドクター、専門家チーム・アドバイザーによる記者会見などへの対応(5)選手およびスタッフのPCR検査の結果、陽性反応が出た場合の補償の見直し・感染に関連する体調異常を申告しやすくするためのルール作りとルールの確認5.選手および家族も含めたチーム関係者にPCR検査の結果、陽性反応が出た場合の対応(1)チームドクター、専門家チーム・アドバイザーに相談する・濃厚接触者の抽出および集団発生に対するリスク管理(2)医療機関受診の対象者の確認・健康チェック表、自覚症状を確認の上、医療機関受診対象者の確認(チームドクター、専門家チーム・アドバイザーなど)(3)日本野球機構・日本プロサッカーリーグと今後の方針を相談(4)陽性反応だった本人は入院もしくは自宅療養。濃厚接触者も自宅待機・その他の選手やチーム関係者は原則、チームの動きに従い、チームは予定どおりに試合・練習をする。チーム全体の活動はこの時点では停止しないが、検温等の健康チェックをより厳正に実施する(5)マスコミ対応・球団、機構・リーグとして記者会見などへの対応6.選手およびチーム関係者以外の関係者から疑い例、陽性判定が出た場合の対応(1)濃厚接触者の洗い出しは、地域保健所(行政)の指導のもとに行う。各地域の専門家チーム・アドバイザーは適切なアドバイスを行う・行政との連絡調整も検討(2)チームドクター、専門家チーム・アドバイザーによる濃厚接触者の抽出および集団発生に対するリスク管理Ⅳ.観客の皆様への対応1.野球・サッカー観戦の観客に生じる感染リスク・不特定多数の集団が集まるマスギャザリング・人込みにおける不特定多数との遭遇・接触・試合観戦中の濃厚接触状態2.野球・サッカー観戦の観客に対する感染予防策・発熱、咳、倦怠感、咽頭痛などがみられる場合には観戦をご遠慮いただく(心臓、肺などに基礎疾患がある場合も同様)自分を守るだけでなく、多くの仲間、選手を守ることの理解の徹底・流行国・地域から帰国した方の立ち入り制限・入場時の濃厚接触を減らすための工夫(ゾーニングなど) 開場時間の繰り上げと、入場ゲート手前の新たな待機ゾーンの設置による入場時の混雑緩和。券種に基づいた規制退場による退場ゲートの混雑解消など・サーモメーター等を利用したスタジアム入場時の体温チェック(37.5℃以上)(平常時の体温が低い方は平温と比較して1℃以上の上昇を認めた方は入場をご遠慮いただく)・スタジアム内でのマスク着用の呼びかけ・観戦時の濃厚接触を減らす工夫 ・応援歌合唱、鳴り物使用の応援スタイルの変更と観客同士のハイタッチ等接触の禁止[応援スタイルのリスク評価例]▽感染リスク高ジェット風船応援➡×(飛沫感染リスク)肩組み、飛び跳ねなど集団での動きの伴う応援➡×(接触感染リスク)立ったり座ったりを繰り返す集団での動きの伴う応援➡×(接触感染リスク)指笛の応援➡×(飛沫感染リスク)トランペット・ホイッスル等の鳴り物応援➡×(飛沫感染リスク)メガホンを打ち鳴らしながらの声援(自然に歓声が大きくなる)➡×(飛沫感染リスク)ビッグフラッグ応援(旗の下で多数が密集状態で旗を動かす)➡×(接触感染リスク)ビッグプレー、ファインプレー等での観客のハイタッチ➡×(接触感染リスク)両手をメガホン代わりにした大声での声援、応援➡×(飛沫感染リスク)フラッグ応援(多数が新聞紙大の手旗を振る)➡×(接触感染リスク)▽感染リスク中応援団による声の指揮による歌唱+拍手応援➡▲(自席で手をたたき歌う程度)応援団の太鼓リードによる声援、拍手➡▲プレーの度の拍手や通常の声援(両手をメガホン代わりに使わない)➡▲▽感染リスク要検討応援タオルを回す、応援タオルを横に広げて左右に振る➡×・スタジアム内での食品および飲料販売の抑制たとえば、観客席でのビールなど飲料販売を全面的にやめる、観客席でビールを売る販売員の数を削減する――といった措置によって、一定時間、マスクを着用せず飲酒・食事を続ける観客を減らす案を検討すべき。当面の間、スタジアム内の飲食の禁止を選択する案もある・マスクを着用できないため、喫煙所を使用禁止とする・ドーム型スタジアムにおける空調管理(空調の出力アップなど空気のよどみを減らす対策・工夫)および、屋外スタジアムにおけるコンコースなど屋内スペースの適切な換気・手指消毒剤の設置入場・退場時の手指消毒の推奨など・当面は無観客試合で開幕し、再流行時には、試合延期も含めて専門家チーム・アドバイザーと検討・ファンから手渡されたペン、色紙,ボールなどでのサインを行うファンサービス、ハイタッチなどを行わない3.野球・サッカー観戦の観客から感染者が出た場合の対応(1)観客に感染例が出た場合に備えて周囲に座っていた方を特定できるような工夫・感染者座席の周辺に座っていた入場者を特定するための手段の確保[指定席・年間シート席]入場者がどの席に座っていたか自分で確認できるよう半券の保管を呼びかける入場券の購入者が正当な手段で第三者に譲渡した場合を想定して、各球団・各クラブは譲渡先が把握できるような管理体制を構築する[自由席・立ち見席]自由席・立ち見席のゾーンを細分化してプラカードなどで提示し、観客に自席をスマートフォン等のカメラで記録するよう係員が呼びかける(2)感染者座席の公表・各球団、各クラブは感染者の座席をHP等で迅速に公表する・各球団、各クラブは周辺にいた観客の特定を急ぎ、注意喚起する各球団、各クラブは、HP等で感染者が発生した場合に感染者から連絡をしていただくこと、また、感染者の周囲の座席の観客には事務局から連絡をすること、を掲示し周知することとする(3)専門家チーム・アドバイザーによる対応協議・集団発生に対するリスク管理を検討(4)マスコミ対応・観戦による感染のリスク評価、他の感染例の可能性などに関して専門家チーム・アドバイザーが対応Ⅴ.応援団、サポーターとの連携・協力プロ野球やJリーグには応援団、サポーター、応援サークルといったチームと選手を鼓舞し、スタジアムを盛り上げる方々が数多くいらっしゃり、チームの遠征試合に合わせて各地域を移動する方々も少なくありません。その多くは、様々な地域の多数のファンとともに応援をともにすることから、感染予防の意識と行動を、選手や球団、クラブと同じレベルで共有することがとても大切になります。プロ野球やJリーグのチームに帯同して取材する報道陣、いわゆる番記者も同様です。つまり、選手やチーム、さらにはスタジアムの観客を新型コロナウイルスの感染から守るには、応援団、サポーター、応援サークル、報道陣などの理解と協力、さらには球団やクラブとの連携が不可欠であり、彼らの協力が大勢の観客に集まっていただいた試合の開催を成功させるカギになると思われます。自由席や立見席のゾーンを細分化して、観客の座席や観戦位置を特定しやすくする取り組みなどに、彼らの協力を求めるという案も検討対象になります。そのためにはまず、本意見書の「Ⅲ.開催に当たっての考え方」を、応援団、サポーター、応援サークル、報道陣などにも説明し、意識の共有を図ることが各球団、各クラブの重要な責務になります。Ⅵ.公式戦の中断・延期について2020年5月22日現在、緊急事態宣言の発令ならびに、国民の感染予防に関する協力・実施によって、新型コロナウイルス感染症の流行は抑えられつつあります。しかしながら、新型コロナウイルス感染症は現時点では有効な治療法は乏しく、ワクチンも開発されておりません。今後、地域によっては経済活動の再開に伴う接触の増加により再流行をきたすことや、クラスターの発生、医療の逼迫などの要因によって、国や自治体首長の指導のもとに移動やイベント開催の制限が行われることもあります。加えて、選手の罹患やチーム内でのクラスターにより、長期にわたり活動が休止する場合は、公平な公式戦とはならないこともあります。プロ野球やJリーグは、感染症専門家・アドバイザー、関係機関と緊密に連携しながら、選手ならびに関係するすべてのスタッフ、観客の皆さまの安全を最優先として、公式戦の中断・延期の判断を行う必要があります。Ⅶ.観客の入場を前提とした試合開催について観客の入場を前提としたプロ野球、Jリーグの公式戦を開催するには、1日あたりの感染者の増加数や、感染経路が特定できない感染者の実数、そして感染者1人が何人に感染させたかを測る指標などのデータが安定し、地域の医療事情の改善が認められること、何より観客の皆さまが安心して来場でき、純粋に試合を楽しめる状況であることが大変重要であると考えています。医学専門家としては、上記ならびに地元自治体のご理解を前提に、公式戦開催の適否を判断されることが望ましいと考えています。以上の点をご考慮いただき、選手、観客、そして日本の野球・サッカー文化を守る決断と実行をお願い申し上げます。2020年5月22日日本野球機構・日本プロサッカーリーグ連絡会議専門家チーム・地域アドバイザー賀来満夫(東北医科薬科大学)三鴨廣繁(愛知医科大学)舘田一博(東邦大学)高橋聡(札幌医科大学)國島広之(聖マリアンナ医科大学)掛屋弘(大阪市立大学)大毛宏喜(広島大学)泉川公一(長崎大学) 

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